第一章

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 「なぁ! 聞いてくれよ楓(かえで)! お前だって口裂き女の噂ぐらい知ってるだろ?」  「えぇ、知ってるわ」  楓と呼ばれた少女は燕とは相反する黒く長い髪が特徴だ。彼女の風貌は可愛いというよりかは綺麗に該当する美少女だ。その容姿は悪く見て高校生後期、良く見て大学生と言った中学生少女らしさ醸し出さない大人びた雰囲気を纏っていた。この三人は見た限り、友人と言う関係は気付きあげているが、三人の服装は別々の制服で一つも統一性が無いことから、塾で知り合った仲間だと言う事が分る。そんな女子大生もとい女子中学生楓は読んでいた歴史の教科書を仕舞うと同時に知っていると豪語した。  「そうか! じゃあお前にも問題だ! 口裂き女が流行らなかったのは何故か? 」  「そんなの簡単よ。『存在してる』が前提に広まった口裂き女が『存在しない』と分かったからよ」  「そのとーーり! 流石我らが教室内での優秀生徒だ!」  燕が解けずにいた難攻不落かもしれない問題をいとも簡単に説いてみせる楓。穴のない見事な解答にテンションあげる少年。明らかについていけず置いてけぼりの燕。三人の温度差は見事に離れていた。  「あのー……分かりやすく教えてほしいんだけども……」  楓の言うことを理解しない燕は恐る恐るその問いの真意について逆に問い返してみた。変に棒をつきさして鬼が出て懲りたのか、嫌に控え気味だ。楓は少年の方に顔を向け、次に燕の方へと顔を向け、二人を見比べた。大体状況を察したのか小さく鼻で笑うとゆっくり説明を始める。 「つまりよ。口裂き女の噂が広まった理由は『口裂き女がいるから危険、ソイツは子供を襲う、だから子供を避難させる』それが主体であり噂の根源であるのよ。でも、もしその口裂き女が実在していなかったとしたら子供を避難させる必要もないし、存在しない生き物が子供を襲える訳もないし、何も起きないなら危惧する必要もない。そう言う事よ」
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