第一章

7/26
前へ
/158ページ
次へ
 「へぇ……。あ、でも何で口裂き女が居ないって分かったの?」  「難しい話じゃないわ。話によると元々この噂はある子供の母親が流したものなのよ」  燕の質問に無駄が無く隙が無く平然とした余裕を見せながら答えていく。まるでプレゼンテーションしている女性社員みたいだ。彼女の演説になんとなく理解してるのか、「ほぅほぅ」とうなずきながら自分の疑問点を払拭していく。  「んん? お母さんが流したの?」  「そうよ。話によると子供が塾に通いたいと言い出した事がきっかけらしいわ。母親はお金もかかるしとどうにか子供を塾に行かせたくないと考えたの。そこで思いついたのが『口裂き女』の話。子供に『夜歩いていると口裂き女が現れて子供を食べちゃうのよ』と教ると子供が夜中の徘徊を怖がったの。でも、塾と言うのは放課後行くものだからどうしても帰りが夜になってしまうわ。早くても八時くらいね。だから子供は塾へ行く事は諦めたのよ」  「へぇ~。お母さんのとんちが巧く効いたんだね」  「これをとんちというのかは知らないけど、そういことになるわね」  「納得したよ」と可愛らしい明るい笑みを浮かべてよく分からない天然を発揮する燕とその発言に少し頭を抱える楓。二人を比べてみると中が良い姉妹の様だ。  暫くすると楓の演説に聴き惚れていた少年が漸く動き出した。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加