第一章

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 「まぁ、お前の言うとおり通称神様はあらゆる人間に目撃され、実際に願いをかなえてもらっているんだ。存在するなら自分も叶えて欲しいと思うだろ? だから皆通称神様の話をするんだ。実際見た人なら背格好はどんなものかとか色々とな。そしてその話が友達の友達を通して、広まり、更にその友達の友達を通してと、正に口裂き女と同じくらいの広まり方を見せている。そして実在するならその熱気が収まる事が無く、今も噂は全域へと広まりつつあるんだ。つい最近ニュースにもなったしな。小さかったけど」  明らかに下がっている彼の情熱に燕は唯笑うしかなかった。悪い事を言った訳ではないのに自分が悪い事を言ったかのような謎の罪悪感が生まれる。どうすればいいのだろうと悩むことぐらいしか彼女には出来なかった。  「気にすることないわ。何時もの事じゃない」  「で、でも……悪い気が……」  おどおどする燕にここぞとばかりのお姉さんフォローが加わる。しかし、それでは力不足な為もう少し付け加えてみる。  「安心しなさい。どうみても悪いのは如月よ」  「断言するなよ。俺はあくまで噂の素晴らしさを伝えたいだけだ」  人々を化かそうとする現代の狐こと如月は自分は悪くないと弁解する。弁解は無用だが、彼が次に吐く台詞が実に興味深い。
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