第一章

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 青年は自前のクセ毛を人差し指でクルクルいじりだす。クセと言っても酷くなく、程良い感じに纏まっている。髪型は全体的に毛先が小さく跳ねている程度の癖が特徴であり、後目立つところは見事な茶髪と言う事だけだ。顔つきとしては悪いという部分はなく全体的にバランスが整っている。童顔から少し成長させた顔つきで、目が少し大きめで二重である。それを除いたら他に目立ったものはないが、顔のパーツからお兄さんと呼ぶには間違いない顔つきだろう。  「じゃあ特に理由はないぜい」  「ねぇのかよ」  「赤羽(あかば)を馬鹿にするのに理由なんていらないからねい」  「そうか、殴ってやろうか」  箸をチャカチャカならしながら嘲笑う青年と、それに必要以上に食ってかかるオッサンもとい赤羽と呼ばれた人物。二人が互いにいがみ合っていると、癖毛の青年がカウンターに置いてある額に飾られた写真を発見する。お宝発見とニタニタ笑いながら財宝を手にした。  「あ、馬鹿! 返せ!」  口が悪い男はカウンターに乗りかかって利き手を彼へと伸ばす。それを華麗に回避すると、男はまじまじと写真を眺める。写真に映るのは一人の女性、二十代ぐらいの明るい茶髪が目立ち、清楚な感じがする綺麗な顔の若い女性だった。  「なんだよなんだよ? 俺が知らない間にまさかの恋心でも抱いちゃったの? 女の子の写真を飾るなんてらしくないじゃんかよ」    何度も何度も襲う右手を気にも留めず避け続ける。天才的なその回避能力は驚くばかりだ。だが慣れているのだろうか、最終的には写真の奪還に見事成功していた。  「あ! なんだよ……。もっと見せてくれても良いだろい?」  「これは今捜してる女の写真だ。名前は『宮崎(みやざき) 薫(かおる)』。誰か知ってる奴が居ると思って置いといただけで、お前が思ってるような奴じゃねぇ」  その回答に口を尖らせる。思ったより面白い答えではなく残念に感じているのだろう。がっかりそうに溜息を吐き、その様子に不満を抱いたのか赤羽は赤羽で青年を睨みつけた。矢張り気に留めている様子ではないが。
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