第一章

18/26
前へ
/158ページ
次へ
 『なに言ってるんですか佐藤さん! 通称神様は今学校、会社、何処であろうと有名な噂ですよ! そんな有名な噂なら幾ら私だって知ってますよ。現に私の友達も会った事が有るらしいですよ。どんな願いを叶えて貰ったのか知らないですけど、実際に一つ願いが叶えて貰ったそうです。私も一度神様に会いたいなって思ってるんですよね』 佐藤と呼ばれた語り手の男と高野と呼ばれた聞き手の女。本来男が語る筈が、女性が男の面目を潰し楽しそうに語りつづける。佐藤は然程気にしては無く、相槌を打つ。しかし、会話に小休止が入る瞬間を見逃さなかったのか、すかさず彼の用意した話題を詰めることで話を切り替えた。  『確かに今通称神様が流行っています。ですが高野さん。この町にはもう一つの神様の噂が存在するのはご存知ですが?』  息をのむ語り。本職発揮といったところか。  『もう一人の神様……ですか?』  彼女の男の雰囲気にのまれたのか、先までの軽い口は塞がる。無言に近い静かな返事をした。  『それは現代の死神と呼ばれた、十二人もの女性男性を殺した連続通り魔のことです。ご存知ですか?』  『あ、それなら耳にした事はあります。妙な足音がしてるとか、大きな鎌を持っているとか、尾ひれがついた様な物もありますけど、その手の噂は途絶えませんよね』  声だけでは感情が伝わりにくいのが普通だが、やや下がり気味の彼女の声は女性としての怯えを見せていると推測できる。  『でも、鎌の件はあながち間違いではなさそうですね。刃物で首を刈りおとすのが手口でもありますからね。矢張り、やる事が残忍であり知名度も高いせいか、今現在、恐怖を代名詞とした世間一般持ち切りの噂となっているわけです。その死神の噂なんですけどね、最近面白い事がネットで騒がれているんですよ』  『ネット……ですか? 』  『えぇ、実は通り魔の犯行には一つの関連性が存在すると騒がれているのです』
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加