第二章

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 何故か自慢げに語りながら、天塚はストラップに指を通しながら誰かから勝手に拝借されたと思う青いスライド式の携帯電話を彼女に見せつける。燕はただ笑う事しか出来なくて、ただ彼の話に相槌を打つ一方だった。本当は彼女も何か話さなければと思っているのだが、彼女の性格故、積極さ等見せる事は出来ない。ましてや会話をするなど持っての他。それでも懸命に努力する姿は何処かしら微笑ましく思える。  「あ、あの!」  「静かに!」  唇に人差し指を当てて「シーッ」と彼女の静止を求めた。何が何だか分からず、彼のその言動には唖然とするしか出来ない。静かにしなければならない理由が分からず、それでも黙って彼の言う事を聞いた。彼の言うとおり燕は黙っていると近くから足音が聞こえてくる。別にそんな事を一々気にしてはキリが無いのだが、彼の表情から唯事ではないと燕は想像した。  「ちょっとついて来て」  「え?」  思わず情けない聞き返しをするのも束の間、彼女の右腕を握る天塚の姿に彼女は言葉を飲み込んでしまった。何を言おうとしたのかも、何をしようとしたのかも全て呑込み全て抑え込み、全てが分からなくなった。それほど異性による接触が彼女にとっては大きかったのだろう。まるでお姫様が王子様に守られてるかのように彼女の腕は彼自身にあれよあれよと何処かへと引かれていく。何も理解してない彼女の顔を見て悪いと思ったのか小さく理由を告げる。  「悪い警察官に追われてるんさね」  「わ、悪い警察官ですか?」  「そ、俺を捕まえようとしてるのさ」  引っ張って、引っ張って、引っ張って、彼女の腕は男の体に引かれ続けていく。気付けば座っていた場所からは離れ、彼女自身はあまり知らないような場所に出た。でも、置かれている物は滑り台やらジャングルジムやらと馴染みある様な物ばかり、子供の遊び場かと思えるそこは知らないようで知るなじみ深い場所と錯覚する。こここそ新宿中央公園内こどもの広場と呼べる場所だ。振り切ったと思ったのか天塚は手を離し、多くの子供が一偏に滑れるような大きな滑り台に腰を下ろす。燕もそれに倣って彼の横に座った。  「あ、あの、一つ聞いても良いですか?」  「何ですかいね?」  「わ、わた、私に何か用があるんですか?」
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