第二章

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 疑いを晴らしたかもしれないという小さな確信が彼女の一息つかせる。しかし、天塚の何かを思い出したかのような仕草は少女に小さな反応をつくる。  「あ、そう言えばメール確認しなくて良いの?」  携帯電話が入れ替わった時、彼は自分の携帯電話だと思い間違って電源を点けてしまった。その時にメールが六件も来たのだが、誰かからの急用じゃないかと言う話を燕にした。その話に耳を傾けつつも、彼女が頷く事は無く彼の提案を受け入れる事は無かった。寧ろ頑なに拒否してるかのようだ。  「お兄さんが目の前に居るのに携帯開くとか失礼だと思って……」  「いやいや、気にしなくて良いよ。六件て相当な数だぜい? 見るだけ見といた方がいいよ」  「あ、でも、友達がしつこく送ってきてるかもしれないじゃないですか……」  「友達なら尚更パッと見てパッと返せばいいじゃんか。なのに一件も見ないで電源消すってどういう事さ?」  彼は一度電源を点けた状態のまま彼女に携帯を渡した。その後彼女は携帯に触り操作したのだから当然メールが来ているのには気付いている。でも彼女がとったのは一件も見ず、電源を消した。天塚は傍にいたから彼女の動きが目に見えていたという事だ。  「あのさ、アンタ、見たくないメールでもあるの?」  「……!」  体が素直に反応する。小さく身震いとかじゃなく、立派に一つの反応を取ってしまった。騙し続けるのも困難になるぐらい、あからさまで致命的な一つの欠点。  「そんな反応取られたら決定だね」  「そんなこと、ないです……」  懲りずにそれでも嘘を吐き、それでも尚偽を語る。脆く儚い自分を見せる。  「いや別にさ、アンタをどうしようとしてる訳じゃないから安心してよ」  「……じゃあ、どうするつもりですか?」  天塚の言葉に薄くだが、警戒心が薄れる。その薄れが今まで吐いてきた嘘までをも薄くする。半分本音が出かけた状態だ。  「何に悩んでるか、相談に乗ってあげるよ。ホラ、幾らでも語りなさい」  「え?」
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