無色に落とされた色は

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――そして、何よりそれを増幅させる疑問がもう1つ。 必然的にも、不確定な存在に目を向ければ、即座にわかることであった。 ――全員の首に掛けられているもの。 金属製の、細い、紐状の……。 肌に触れる程度で首を締め上げることはない。 勿論違和感は除けないが、障害になる程ではない。 けれど、それ程ゆとりがある訳ではなく、その輪を顔から抜くこと、 また繋ぎ目も見当たらず、外すことは不可能のように思えた。 更にその輪には、長方形の金属板が取り付けられている。 眼前に近付けようと持ち上げれば、なんとか自身の視界に入れることが出来た。 薄い金属板で、大きさは子供の指の第2関節程度で、重いとは感じない。 どこかペンダントのようであると思えるそれは、けれど画面らしき面があり―― それも現在、その部分には何も映っていないため、定かではない。 けれど、どうしてもその人為的な行為に、この白く簡素な部屋も相まって、自分達が何らかの実験の被験体にされているのではないかという想像に至ってしまう――。
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