無色に落とされた色は

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……… 白い床、壁、天井。 天井に取り付けられた、白い明かり。 装飾品はなく、簡素な造りになっている。 そして10人程度の人間の眠りの場と化していた、その人数を並べることが可能な白いベッド。 よって、必然的にそれだけの広さはあるけれど、そのベッドを納めるだけの空間。 白という色は、どちらかといえば優しさに近いものを与えられるはずなのに、 そんな統一した色が、気味の悪さと、底の知れない不安を感じさせる。 いや、この状況から既に、そんな嫌な感情ばかりが巡らざるを得ない。 見知らぬ場所、見知らぬ他者…… そして、何より自分がわからない。 全てに警戒心を抱きながらも、答えを求め、何かにすがりたくて、周囲に疑問を投げかける。 けれど、言葉は違えど、返答は全て同じ内容であると理解する。
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