不運な男 は夢の中で花を見付ける

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女の謝罪の言葉と…… 男の笑い声は、同時だった。 女の肩越しに、暁月の……相変わらずの美貌だが、妙に腹の立つ笑顔が見えた。 「相性、いいんじゃない?」 「……誰と? そして、何と?」 「その状態でよく言う。 わかってる癖に」 俺は、気を遣いつつ、女を退ける。 「全くわからないな」 俺は、俺達のやり取りを興味深く傍観していた女に向き直った。 「医者(こいつ)に用事?」 すると、この薄汚れた地下世界にはそぐわない無邪気な笑みを浮かべ、女は答えた。 「あなたに。 前回、自己紹介ができていなかったから」 そして、俺へと手を差し出し、こう言った。 「私の名前は『凜』。 よろしくね」 ウェーブがかかった艶のある黒い髪、 健康的な張りのある小麦色の肌、 異国の血が混ざっているとわかる相貌の女__凜は、 躊躇いがちに持ち上がった俺の手を、その手で柔らかく包んだ。 そして、繋がった俺達の手を軽く引き…… 「"誰" は、私。"何" は、体。 (あかつき)さんが言いたいことは、 私と夜鷹くんとの、体の相性のことだと思うの」 俺がわからないのだと信じ、教示する。 親切心による言動なのだとしても、 相手である俺に対し、恥じることなく、真正面から言ってのけた凜に、俺は面食らった。 更に、俺の耳に口を寄せ、こう囁く。 「私が相手になるよ。 だから、遠慮無く声を掛けてね」 …………
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