喧嘩

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なんて強情で奇特な女なんだ。 せめてどっちかにしてくれ。 「とにかく、今自殺されるのは俺が困る」 「あんたが困ったって、私は構わないわ」 くっ…… 予想通りだよ! だが、俺もここは譲れないんだ! 無駄とは思うが、俺は一縷の望みを賭けて、俺が困る理由を話した。 意外にも彼女は話に耳を傾けてくれた。 そして聞き終わると思案する。 「………」 「……あの」 「………」 「……えっと」 「………」 「……もしもーし」 今度は一転、黙り込んでしまった。 暫くして、彼女は口を開いた。 「……なるほど。話は解ったわ」 「! 解ってくれたか!」 奇跡が起こった! 「要するに、お互いの譲れない所をまとめると、私は死なないことで、あなたは私が自殺することね」 「え? あぁ、そうだな。そうなるな」 「それならあなたが私を殺してくれれば万事解決ね」 「は? え?」 そういうと、女は自分の頭を指差して言った。 「さぁ、撃って」 「……お前、俺の話、解ったんじゃないのか?」 「解ったわよ」 そして女は要するに、と前置きしてから言った。 「あなたが警察に捕まった時に、私の自殺をあなたの殺人と誤解されるのが困るんでしょ? それなら事実あなたが私を殺せば…」 「ちがぁぁう! 俺が困るのはそういうことじゃなぁぁい!」 やっぱりこいつ解ってない!
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