序章

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∮∮∮ ∮∮∮ 出会い。 人の出会いは一期一会という。 文明が進歩し、インターネットにおけるチャットやメール、ブログや掲示板などで人の交わる場所までもデジタル化した。 まぁ、それはどうでもいい。 問題は出会い方だ。 色々な出会い方があると思う。 学校や会社、趣味の集いに地域間の仲などある。 だが、漫画や小説のように、街角でぶつかって…とか、落とし物を拾って…などでの出会いというのは、現実世界ではたいてい出会った後の“先”が無い。 ……なんか後なのか先なのか、変な日本語を遣っているが、言いたいことは解るだろう? とにかく、そういう出会いで“先”があるのは稀なんだ。 だが、俺はその稀を成し遂げてしまった。 「ねぇ、さっさとしてくれない? 私はとっとと死にたいの!」 さっさとだの、とっととだの、余程死に急いでいるらしい。 俺の胸ぐらを掴み、前後に揺らすこの制服姿の女は、俺が街でたまたま、偶然に、近くにいたから、“目を付けた”だけなのだが、何でこんな奴を… 真夜中の廃ビルの一室で、俺は心の中で嘆息した。
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