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俺はすぐさま真沙美に駆け寄り彼女の背中をさすった。
「おい、大丈夫か?」
真沙美は一瞬だけこっちを振り向いたが、また嘔吐感が湧き上がってきたらしく、先程と同じように吐き出した。
暫くして、ようやく治まったようだ。
真沙美の呼吸は若干荒いが、吐く気配はない。
俺は空いている手でポケットからティッシュを取り出した。
駅前で配ってくれるティッシュはホームレスからすれば重宝なのだ。
「ありがと…」
消え入るような声でのお礼だった。
真沙美はティッシュを数枚取って口を拭った。
「急にどうしたんだ? 風邪気味だったのか?」
「………」
真沙美は少し虚ろな目をしていた。
「おい、本当に大丈夫か?」
「……う、うるさいわね。ただ悪夢を見ただけよ」
「お前は夢程度で吐くのか?」
「こんな目に遭ってるから、緊張で身体が衰弱してるのよ」
それを言われると俺としては辛い。
「まぁ、とにかく。それならよく睡眠を摂っておけ」
俺は真沙美の腕を自分の肩に回し、支えながら歩いた。
立ち去る前にここの扉を閉めるのは忘れなかった。
部屋に戻った後、真沙美をベットに寝かせた。
真沙美が寝静まったのを見計らって、俺は着ている上着を被せた。
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