序章

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∮∮∮ ∮∮∮ ことの次第は、一週間前にまで遡る。 俺は生活するのに必死で、全財産は硬貨数枚。 空腹を耐え凌ぐために公園の水で腹を満たすのなんて日常茶飯事だし、万引きで捕まった回数はもうすぐ三桁に達するんじゃないだろうか。 なので、出禁になった店はいくらでもあるし、万引きGメンからはブラックリストに入れられていること間違いない。 すごいだろ? 万引キングと呼ばれかねない記録さ。 残飯を拾えたらその日は高級ディナーと言えるし、野良犬を殺して食糧にしようか真剣に考えたこともある。 もちろん、帰る家などない。 そのため公園や道路、駅に公衆トイレ、電話ボックスで寝泊まりしたこともある。 そんな生活をしていた時だ。 公園のホームレス仲間からある提案があった。 「銀行強盗をしないか?」 その時、その場にいた人間は五人。 いずれもホームレスだ。 俺以外はみんな四、五十代の壮年で、ホームレス歴は長くても強盗仲間としては不安しかない野郎ばかりだ。 なので、最初は断るつもりだった。 だが、そいつの計画の緻密さに驚かされ、計画の全貌を聞いた後は静まり返っていた。 みんなかなり真剣に悩んでいるのだろう。 勿論、“賭け”もあった。 だが、乗ってみる価値はある。
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