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この不幸は手もなく私を否定し尽くし、尚長い放蕩の末、自堕落な、真に軽侮に値する得難い神秘となったのである。 今から十数年前、ある不実な機縁から公序に反する許し難い罪人として社会から除外された私は、私に与えられた謂われのないこの悪名をもって、愚昧な大衆の望み通り彼らと絶縁し、改めて俗界と対立する悪を鋳造したのだった。 だが、この時感受するに及んだ著しい寂寥感は、汚穢(おえ)の底で辛辣な現実に直面する折々に、私を尋常ならざる痛苦で引き裂き、自裁する誘惑にさえ一度といわず駆らせたのだ。が、しかし、あれら世俗の醜悪な嗤笑の調べに拮抗する深い恨みから、皮肉にも私は再び生きる糧を得たのである。 そうして、ある時、今もって目を閉じれば鮮やかに蘇るあの瞬間、光と闇の啓示を受ける刹那まで、常の孤独を慰撫する術を、むしろこの怨恨の全うにこそ見出そうとしたのだった。
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