Pattern1 少年Aの方法

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中学に入学して、僕は迷わず陸上部に入部した。 選んだのは短距離。100mと110mハードル。 家の近所の中学には、棒高跳びや走り幅跳びをする設備は無かったし、僕はモノを知らず、なおかつ頭が凝り固まっていたので、それだけに専念した。 いつかハードルを飛び越えた瞬間に、風が僕を運んでくれると本気で思っていた。 最高学年になった頃、県大会までは行けるけど、行けるだけ。という中途半端さが嫌になりタイムも気にするようになっていたけれど。 そのおかげか県で決勝までいった。 高校も自分の学力の範囲内で1番陸上に力を入れているところを選んだ。 入学して物理を選択、学ぶこと1年。 春の空をぼんやりと眺めながらふと気づいた。 黒板や教科書に書いてある事は現実にも適応されるという事に。 つまり「あれ?人間、飛べないじゃね」と気づいたのだ。僕はその日の内に退部届けを提出した。 あまりに急な事に顧問も驚いていて。まわらない頭で何か言っていたようだったけれど、走る事に一気に興味をなくした僕の頭には何一つ響かなかったし残らなかった。
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