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2日後。
昼食を食べている時、よく一緒に食べている先輩に言われた。
「お前、部活辞めたんだって?」
先輩は部活の先輩ではなく、中学が同じだったわけでもなく、
たまたま同じ場所でご飯を食べていて、なんとなく喋るようになっていて、仲良くなっていた僕の多いとは言えない友達の1人で、だからこそあまり触れられたくない話題だった。
「先生に探り入れるように言われたんですか?」
「お前そんな目かけて貰える程の選手なのかよ」
鼻で笑われた。
「ですよね、言ってみたかっただけです」
と自分も笑った。
しかし実は、わからなかった。本当に。
周りに興味がなかったから。
「ずっと続けたのは知ってた。それを急に辞めたなんて聞いたら気になるのが人情だろ」
同級生や先輩にもきかれた。
正直に話したら、笑われたり、真面目に話せと怒られた。
「笑いませんか?」
「さあ」
先輩にまで笑われたら僕は落ち込んでしまうかもしれない。
自分でも頭悪い自覚があるだけに。
「言いたくありません」
「じゃあ笑わない」
僕は大きくため息をついた。
「じゃあ、なんで走ってたんだよ。理由も無しに続けられないだろ。毎日何時間もしんどい目なんて。…お前まさか噂にきくマゾか!?」
僕はまた大きくため息をついた。
撤回。
僕はこの人に笑われても痛くもかゆくもない。
「僕は…、僕は空が飛びたかったんです。
ほら、飛行機とかみたいに。走って勢いつけて、っぽーんって」
先輩は約束通り笑わなかった。いや約束していなくても笑わなかっただろう。
ただ口をぽかんと開いて、目をぱちくりさせて「お前天才じゃね!?」と言いながら、上がりきったテンションで僕の頭を、大型犬のそれのように、わしわしと髪を掻き混ぜた。
ちなみ先輩の選択は美術である。どうにもなかなかの天才肌で、突拍子もない先輩の行動や感性に、常々、僕はついていけない節があったが今回もチンプンカンプンである。
「で、それで空は飛べたのか!?」
目をキラキラさせて聞いてきた。勿論僕は即答。
「人が飛べる訳ないじゃないですか。
気づいたから陸上は辞め「人が飛べるか飛べないじゃなくて、お前は飛べたのかきいてるんだ!!」
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