空腹とケータイと相方と

2/3
前へ
/64ページ
次へ
「どうした?」  シャツ長袖マジ暑そー。 「ダメだ。アンテナバリゼロだ」 「なんだ、バリゼロって。バリサンとかは言ってたけどさぁ、アンテナないのをバリゼロなんて言わないし。そのバリはなんのバリになんだよ」  バリゼロって。なんだよ、そのオリジナルワードは。おーなんだなんだ、ケータイすごい勢いで振り出したよ。 「全然、入りそうにないな」 「ハハッ、振ったってかわんねぇよ。まだ、そんなことしてんのかよ」  気持ちはわかるけどな。俺もたまにやっちゃうし。 「まあいいや、入んないならしかたない。とりあえず並んで歩けよ。二人しかいないんだから」  しかし、あんなに振るかなケータイを。電波入んねーんだなここは。今どきなぁ。家に連絡できねぇな。まっ、あと少しで着くだろ。まぁだケータイいじってる。電波入んないとか言っておきながらいつまで 〈ポーン、ポーン〉 「あっ、今の音ってなに、なんの音?なんか、ちょくちょく聞こえてこない」 「…うん」  ハイハイ、ケータイいじるので忙しいと。まったく興味なしということで。でもなんの音だろ。にしても時間がわかんないっていうのもなんだか落ち着かねぇな。起きてから一回も時計見ないなんてそうないし。俺、なに落としてんだよ。腕時計しないしなぁ。っていうか周りもあんまりしてない感じがするけど、ケータイが時計代わりだもん、最近は。いったいどこまで進化すんだケータイ。着メロもはじめ三和音だったのに、十六和音になって、今じゃ何百和音とかになってるし。そのうえ着歌って!鳴ってもちょっと聴いちゃうし。写真も画質どんどんよ良くなっていくもんなぁ。ほとんどデジカメだよデジカメ。デジカメの売り上げ落ちてんじゃねぇの。いや、それよりも動画が標準装備だし。ああいうのはなぁ、よからぬことに使うやつがなぁ…こいつもそうだったりして。おわっ!一瞬目があっちゃったよ。ビックリしたー。なんなんだいったい。計算機は昔っからついてるし、辞書はサイトにあるけど、フツーに付いてくるかもな。英語の方も。おおっ、そしたら電子辞書の役割まで。そりゃ、試験のとき持ち込んじゃダメだよ。あとは、テレビは…あるか。そのうち、ATMとかでピッて合わすだけで、お金おろせるようになったり、免許証とか、あと、じゃあパスポートも、すげぇなケータイ、なんでもありじゃん。でもなおさら落としちゃダメじゃん。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加