相変わらずな

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 川の流れる音と木の揺れる音と鳥の声かな。静かにしてるとけっこういろいろ聞こえてくるもんだな。 〈ポーンポーン〉  あれ? 今のなんの音だ。危ねぇ、気ぃとられて視線はずしそうになったよ。く~なんか言え、なんか言え、なんか言え~。男二人こんな山ん中で見つめ合っ てなにやってんだか。人が見たらどう思うよ。う~目に涙が溜まってくる~、もう限界だ~。せめて動けよなー。おっ、下向いた。勝った、勝ったぞー。あっ、 またこっち向いた。 「覚えてないのか」  しゃべった! 「えっ、なにを? 酔ってて記憶飛んでるから、昨日なにがあったか、つーかこっちになんでいるのか聞こうとしてんのに、お前は全然、ってだから無視して行くなよ。ちょっと待て!」  いきなりしゃべったからちょっとビックリしちゃったよ。濡れた体Tシャツで拭いてまたそのTシャツ着たら意味なくない? その上からシャツ着んのか。それ暑いだろ。 「覚えてないのかって、なんのことだよ。俺がなんかしたのかよ、その傷も俺のせいなのか」 長袖のシャツ暑そー、しかも黒だし。ちっとも夏してねぇな。 「あっ、一人で行くなよ、一言かけろよな、オイ、無視すんな、なんか言え~」
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