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チナミを嫌いだというのにはそれなりの理由がある。
チナミはいつも必ず同じ位置に立つ。
俺の正面ではない。右斜め前、机の角のところだ。
そこに来て何をやっているのかというと、チナミのヤツ、俺の机の角に股間を押し当てているのだ。
そして、喋りながら身振りを交えるふりをして、腰を巧みに動かしてくいっくいっと擦りつけているのだ。
そして一方的に喋り続けながらも、顔に赤みが差してきて、だんだん口数が少なくなってゆき、最後はいつも息苦しそうに途切れ途切れになる。
視線だけはずっと俺を捕らえたまま。
ほんとにいつものことなのだ。
呆れるほど何度も繰り返される。
これは机オナニー以外の何物でもない。
恥ずかしいヤツだ。汚らわしいヤツだ。
チャイムが鳴ってチナミが去って行った後、机の角を見てみると、いつもちょっと湿っている。
生温かそうな温度が伝わってきそうだ。
すごく気持ち悪くて吐き気がする。
そんな所にはとても触れないので、俺はその部分は俺の領土外だと見なしている。
常時は領土外だから何があっても気にしないようにしていた。
消しゴムとかがそこに転がれば、それは異郷への無謀な旅立ちを意味するので、すぐさま捨てることにしていた。
こうして国境線を挟んだ緊張状態が続いてはいたが均衡はどうにか保たれていた。
だが、そうもいかなくなってきた。
最近そこが臭うのだ。
生臭い匂い。
いやでいやでたまらない。
チナミが恨めしい。
そこで俺は一計ひねり出した。
授業が終わって起立礼が終わってチナミがこっちに向く前に、俺は速乾性スーパー接着剤をチナミの指定席に塗りたくった。
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