住み始める街

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 足早に玄関へと戻る。こういう作業は早く終わらせるに限る。持久走でモタモタ走るより、パッパッと走って休憩した方が楽なのと同じものだ。 「ん? 雪深か」 「父さん」  玄関先でばったりと父に出くわす。顔を埋めるほどのダンボールを抱えている。 「荷物はもう運び終わったぞ。お父さんが頑張ったからな」  ダンボールに邪魔されて確認出来ないが、おそらくその顔は自慢気に鼻を高くしているのだろう。  さて、荷物がないなら僕は何をしたらいいのだろうか。 「お父さんはこのダンボールを置いたら母さんを手伝うつもりだ。お前はそこら辺をブラブラしたらどうだ?」 「普通、右も左もわからない状態でブラブラする?」 「しないな。けど、よっぽどの馬鹿じゃないとお前の歳で道に迷うのは難しいと思うぞ?」 「ブラブラしても意味ないよ。友達いないし」 「近くのコンビニを把握するのは大切だと思うぞ。遠慮するな、ブラブラしてきなさい。というかしなさい。空気を読みなさい」  母さんといちゃつきたいのか。なるほど。 「ん、わかった。適当にブラブラしてくる。色々終わったら携帯に連絡して」 「おぉ。気をつけてな」  ハハハ、と野太い笑い声が響く。ガチャガチャとダンボールを揺らしながら、父さんは家の中に入っていった。 「はーい。行ってきまーす」
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