dreizehn

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「佐倉!どこ行くんだよ、そんな慌てて!」 冬史郎に手を引かれ、カヅキは走る。 島の中。植物が生い茂り、木の根が剥き出しになっており道もない地面。 悪路という表現では足りない位にひどい足場である。 走ると書いたが、実際は、大股で多少早歩きか?と言ったようなスピードだった。 自分と同じぐらいの背の植物の葉っぱが、時折顔に当たってチクチクと痛い。 「遠藤くん知ってた?」 「何が?」 植物を掻き分けて進む。 「さっきまで一緒にいた先輩達が、僕達とペアになる先輩だったんだよ」 「まじか!」 「まじだよ。やっぱり気づいてなかった。先生言ってたのに。遠藤くん上の空だったもんね」 冬史郎は苦笑した。 いつの間にか二人は並んで歩いていた。 「佐倉、手離していいよ。俺ちゃんと歩けっから」 「そう?」 カヅキはやんわりと自分の腕を掴む冬史郎の手をほどいた。 「よくわかんねーけど、こんなとこで逃げたりしねーし」 含みのあるカヅキの言い方に、笑ってしまった。 まあ、ここまで来ればね。 うっすらわかるよね。 「でも僕は、遠藤くんをエスコートしなくちゃいけないからさ」 「どこへ?」 「お茶会」 お茶会?この島で? こんな、自然溢れすぎて整備もされてないところで? 会話しながらも二人足は止めていないが、カヅキはただ、時折方位を気にしながら歩く冬史郎に着いていっているだけで目的地はわからない。 「遠藤くん、僕ホワイトラビットになったよ」 .
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