drei

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入学式は滞りなく終わる ……はずだった。 というか、カヅキ以外の生徒達にとっては、入学式は何事もなく終わったと言ったほうが正しい。 生徒会長挨拶というやつで、あの美男子が出てきたのだ。 そんな漫画やドラマにありがちな展開に、思わず心の中でツッコミを入れながら一生懸命すまし顔を作った。 ぶっちゃけ落ち着いていられないのだけれども。 あれから何度も思い出しては頭を抱えて、「あーッ」だの「うー」だの「キーッ」だのと声を上げた。 別にキスされたからではない。 そんな事は、相手には悪いが事故だと思えばよい。 カヅキが取り乱してしまうのは、キスをされたのが「嫌じゃなかった」と言う点でなのだ。 少しドキドキしてしまったのも許せない。 まさか入学式前日に、男子校にあるという「あの世界」に片足を突っ込むとは思わなかった。 いやいやでもしかし、 あれほどの美男子なのだから、同性が少しだけドキドキしてしまうのもきっと仕方がない… そんな事がぐるぐると頭を巡る。 もうカヅキは脳内で激しく右往左往しまくりなんである。 なもんで、理事長(だったのだ)の父親の話なんてまったく耳に入らなかった。 ていうか、耳に入れてる場合ではないと言うか… 『俺の名前は士堂アルス。順番が違ってしまったが、どうか…付き合ってくれとは言わない、仲良くしてくれないか?』 真剣な目で彼が言った台詞。 それもまた、カヅキの頭をぐるぐるとさせる原因の一つだった。
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