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「あ、遠藤カヅキです。よろしく」
「こっちこそ」
やっとこ我に返ったカヅキは、改めて名前を言い、ペコリと頭をさげた。
佐倉冬史郎も真似をする。
それから、お互い笑顔。
「今日はもう、寮に帰っていいみたいだよ」
「そうなの?つーか…」
「何?」
冬史郎の台詞で思わずまわりを見渡すと、他の生徒達も同じ部屋になった人(らしい)同志で教室を出ていくところだった。
2人もその流れにのり、カバンを持ち歩きだす。
「何で俺の名前知ってんの?」
「プリント配られたじゃん。皆の席順が書かれたやつ」
「は?貰ったっけ?」
「貰ったよ。はは!遠藤くんウケる」
「や、まじで気付かなかったし」
「気付けよー」
「考え事してて…」
「どんだけだよ」
笑う冬史郎の横で、カヅキもつられるように力なく笑った。
まさか生徒会長にキスされて、それが案外嫌じゃなかったのが嫌で、パニくってましたとか言えない。
ていうか言えるかい。
恋愛とか人の好みは自由だが、そんな価値観差し置いても、初対面の人間にそんな事言ったら引かれることコレ確実である。
しかも話してみれば、佐倉冬史郎くんは何だか良い奴そうだ。
寮で同室なのだから、仲良くするにはこれからが肝心。
人付き合いは慎重に。
意思の疎通が下手くそだと言われるゆとり世代だって、コレくらいは考えるのですよ。
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