eins

2/4
前へ
/122ページ
次へ
セレブ。 テレビとかネットとか雑誌とかでよく聞いたり見たりする単語。 …という認識しか、今まで彼には無かった。 まさかそんなものになるとは、夢にも思わなかった。 いや、夢であってほしい。本当の自分は今暖かい布団で眠ってるに違いない…… 携帯のアラームで目を覚まして、たった一人の肉親である母親と朝食を食べるんだ。 「ほらカヅキ。ここが明日からお前の部屋だ」 新たに登場した肉親二人目(普通こんな表現しない)にそう言われ、彼、遠藤カヅキは、信じられない現実に舞い戻った。 「明日からお前の楽しい生活の拠点となる部屋だぞー。他の生徒と相部屋になるが、どんな子と一緒になるかは、明日までのお楽しみだ」 「楽しそうだなオヤジ様よ」 「楽しいぞー!なにせ私の学園に、実の息子であるお前が入学してくれたんだからなー」 「無理やり入れたんだろうが!」 本当に楽しそうな父親を横目に、カヅキはげんなりした。 セレブのお子様が入る学園だけあって、相部屋の部屋とはいえかなり豪華だった。 足元の絨毯はふかふか、ベッドもしかり。しかもでかい。 部屋は広くて、寝室とリビングに分かれてる上に、これまた広いバスルームとトイレがあるのだから凄い。 カヅキがまだ物心のつかない内に生き別れたらしいこの父親は、一体何者なんだろうか。 外見はナイスミドルなくせに、行動や言動がどこかアホっぽい。 けれどどこか食えないこの男を、カヅキは改めてまじまじと見つめてしまった。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加