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セレブ。
テレビとかネットとか雑誌とかでよく聞いたり見たりする単語。
…という認識しか、今まで彼には無かった。
まさかそんなものになるとは、夢にも思わなかった。
いや、夢であってほしい。本当の自分は今暖かい布団で眠ってるに違いない……
携帯のアラームで目を覚まして、たった一人の肉親である母親と朝食を食べるんだ。
「ほらカヅキ。ここが明日からお前の部屋だ」
新たに登場した肉親二人目(普通こんな表現しない)にそう言われ、彼、遠藤カヅキは、信じられない現実に舞い戻った。
「明日からお前の楽しい生活の拠点となる部屋だぞー。他の生徒と相部屋になるが、どんな子と一緒になるかは、明日までのお楽しみだ」
「楽しそうだなオヤジ様よ」
「楽しいぞー!なにせ私の学園に、実の息子であるお前が入学してくれたんだからなー」
「無理やり入れたんだろうが!」
本当に楽しそうな父親を横目に、カヅキはげんなりした。
セレブのお子様が入る学園だけあって、相部屋の部屋とはいえかなり豪華だった。
足元の絨毯はふかふか、ベッドもしかり。しかもでかい。
部屋は広くて、寝室とリビングに分かれてる上に、これまた広いバスルームとトイレがあるのだから凄い。
カヅキがまだ物心のつかない内に生き別れたらしいこの父親は、一体何者なんだろうか。
外見はナイスミドルなくせに、行動や言動がどこかアホっぽい。
けれどどこか食えないこの男を、カヅキは改めてまじまじと見つめてしまった。
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