eins

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「どうしたカヅキ、そんな可愛く見つめてきて。父さんどうすればいいんだ」 カヅキの視線に気付いて、父親は照れながらそんなセリフをはいてきた。 「…………いや、なんもしなくていいすから」 重い重い疲労感を覚えて、思わずガックリと肩を落としてしまう。 現実ってば辛すぎます。 「しっかしそれにしたってさ」 「どうした?」 改めてカヅキはまわりを見渡し、ため息をつく。 なにせこの学園ってば、寮の内装からしてこんななので、 「俺、最初この学校に着いたとき城かと思った」 「ははは凄いだろ」 「いや、凄い通り越して、ぶっちゃけありえねーんだけど」 得意げに父親は笑っているが、正直本当にありえない。 夢のような現実ってこういう事を言うのだろう。 ここは、カヅキが今まで暮らしてきた場所とはかけ離れ過ぎているから。 「お前と母さんには、苦労をかけた。金の力でどうこうする気はないし、お前がこの学園に本当に愛想がつきたら辞めたって構わない。ただ…」 「………」 ついさっきまで笑っていた父親は、急に真面目な顔になった。 どこだかしんみりした空気に、カヅキは少し嫌悪にも似た感情をもった。 別に今まで居なくて、ひょっこり帰ってきたこの父親を恨む気はさらさらない。 だからというべきか。 今の空気は苦手だ。さっきの疲れる空気の方がまだましだったのに。 「今まで父親らしい事なんか一つもやってこなかったそんな男の、これが最後のわがままだ。お前の高校を卒業するまでの成長を見守りたい」 「いや、いいけど…さ、あーでも」 「でも?」 「俺があんたの息子だとか、そういうのは秘密の方向で。俺はフツーにここで学園生活おくるから、干渉も無しで」 「ああ、わかってる」 頷く父親にひとまず安心。 でも、自分で言っといてなんだが、こんな所で「普通」の学園生活なんて送れるのだろうか。 少しだけ不安。 ああ、未来ってなんで見えないのかしら……
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