第1蒼

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…夜10時15分… ~箱根新道~ 「おいおい…シャレになんねえよ」 新型の911とバトれると思ってワクワクしてたら2コーナーでソアラのバックミラーから消えちまった… 調子に乗って直線でモノを言わせるタイプかよ。宝の持ち腐れってヤツかな… あんなヤツに乗られてるなんざポルシェが可哀想だ。さて、あんなポルシェはほっといて、早くアイツの所へ行くか。 少しペースを落とし、ステアリング周辺にある右側のレバーを操作して、ヘッドライトをハイビームにした。 光り方と蒼白い色が特徴的なディスチャージヘッドライトが漆黒の路面を遥か前方に照らしてくれる。 「久々の箱根新道だ、気を付けて走るとしよう」 ヴォォォォ! ガコッ!バシュ! ヴォォォォォォォ! 五割程度で箱根新道を走る蒼いソアラ。 "ドリフト"はせず、キッチリとラインを取ってクリッピングポイントを上手く捉えながら"グリップ"走行でコーナーを攻略していく。 おいしい使い所のエンジン回転数を上手く活用しターボラグにならぬ様、アクセルワークに気を使いながらステアリングをクイックイッと操作をしていく。 そして、ギョアアアと4つのタイヤからスキール音を出し、蒼焼けしたチタンマフラーから放たれる官能的で心地良い"1.5J"エンジンのエキゾーストノートが箱根の山々をこだましていく。 ゴヴォァァァ…! バシュルル! ヴォァァァ! アクセルを放した時HKS製GT2835タービンから聞こえてくるバックタービン音もまた心地良い… ん、芦ノ湖大観ICを過ぎたな。もうちょいで箱根峠ICか… よし、もう一踏ん張りだな。 アクセルをグッと踏み込んでコーナーを立ち上がった時である。 突如として、一匹の動物が俺の視界に入って来たのだ。 「バッカヤロウ!」 すぐさまサイドブレーキを引き上げて車体の向きを変え、テールスライドを誘発。 ステアリング、アクセルを巧みに操作し、動物を避けようと先ほどとは逆に車体の向きを変えた。 つまりは右、左へと瞬発的にドリフトをしながら動物を避けたのだ。 だが俺は一つだけミスを犯していた。 動物を避ける事だけに集中した為に、その後のエスケープゾーンを予測していなかったのだ。 だから… 「ヤベ…この先崖じゃん…」 ズギャァァァァ! ザシュ! ガサガサガサ! ゴシャ!パキン!
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