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 ――騙された。  僕はなんと愚かな失態をしでかしたのか。町はこんなにも美しい。死ぬ直前になって、ようやく僕はそれを認めることができる。世界は素晴らしい。人生は最高だ! 同じような生に執着する言葉が一瞬のうちに頭の中をかけめぐり、反射し、少しこぼれた。僕は涙をはるか上空においていく。手を伸ばせばつかめそうなところから、もう届かない空の彼方へ。  町は逆さまの状態で安定した。激しくブレた美しいそれらをようやく捉え、手を伸ばし抱き締めようと努め、意識をギリギリのところで保ちながら、最後の思考を始めようとしたとき、少女の透明な声が響いた。
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