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「お疲れさん」
そう言いタオルを投げて来たのは、ガソリンの臭いがほのかに香る整備士。
彼の目線の先では、今だに宇宙服の様なパイロットスーツを脱ぐのに悪戦苦闘している少年、を見ながら、暑いのか、手を団扇代わりにして顔を扇いでいた。
「で、今日はどうだったよ、御幸(こうじま)よ?」
ニタニタ質問している辺り、返って来る答えは既に分かっているようだ。
なんと無く悪意を感じるなー、と御幸は思うが、邪険にするのもどうかと思うので苦笑いで応対する。
「いつも通りですよ。庵(いおり)が馬鹿やって、俺は尻拭いです」
その答えを聞くと整備士は満足げに頷く。
整備士の用件はそれだけだったらしい。
意味ありげな笑みを浮かべると、さっさと立ち去ってしまった。
その後ろ姿を特に何も考えずに見ながら、蒸し風呂の様に蒸れるパイロットスーツから、御幸は這いながら抜け出す。
やっと呪縛から解放された御幸は、近くに置いてあった椅子にどかりと座ると、手近に置いてあったクーラーボックスから、スポーツドリンク取り出し、一気に飲み干す。
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