第一章『学生達の夜』

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今現在御幸(みゆき)が居るのは、鉄板剥き出しの、大型空母内の整備ドック。 なので御幸の見ている範囲でも、多くの航空機が整備を受けている。 ちなみにパイロットスーツを脱いだ状態では、首から足先まで黒ずくめの、体を地味に締め付けるものすごくピッチリとした窮屈な服になる。 要所要所は伸縮性のある生地を使用してはいる為、動きやすいと言えば動きやすくはある。 ただ、なにぶんピッタリ身体に張り付いているため、端から見ても体型がよく分かってしまうのが玉に傷。 そんなスタイル丸分かりな服では無く、普通に私服を着せれば、そこら辺に普通にいる学生にしか見えないこの少年こそ、 特殊空戦部隊『スカイウォーカー』隊隊長、香島 御幸(こうじま みゆき)。 そんな御幸が、椅子に座って軽く日和っていると、どこからか、おどけたような声がドックに反響する。 「お~、御幸~。今日もお疲れブルッ!!」 語尾がおかしくなったのは、声をかけながら接近して来た声の主の顔面を、御幸が容赦無く殴り飛ばしたからだ。 そしてやたらと低いトーンで、 「……テメェ庵(いおり)、次ふざけやがったら、後ろからミサイルぶち込んでやる」 殴られ、床にぶっ倒れてピクピクしている男は、『スカイウォーカー』隊副隊長、菅田 庵(すがた いおり)。 至って普通な御幸とは正反対に、穴開け不要、取り外し可能な簡易ピアスに髪を茶髪に染めたりと、やりたい放題の問題児ではある。 が、根は決して悪い奴では無い……と、御幸は思っている。
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