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睨みながら殺気を垂れ流している御幸(みゆき)に対し、今だに倒れている庵(いおり)は、
「……しゅんましぇん」
と言っているが、それを無視して御幸はそこから立ち去ろうとする。
と、そこへ、
「また喧嘩しているのですか……子供ですね」
と、今度は女性の声がする。
御幸はその声がした瞬間、諦めを込めたため息を吐く。
「あ~、違うんだ興戸(こうど)、これゴフル!」
「問、答、無、用」
言い訳しつつ振り返った御幸を、スッパァァンッ!! と見事なハイキックで蹴り飛ばしたのは、スカイウォーカー隊の隊員、鮫嶋 興戸(さめじま こうど)。
腰まである長い黒髪を後ろで束ね、ポニーテール状にしている女性で、身長も高く、胸も豊満。
いわゆるモデル体形を持っている少女……いや、女性。
だが、それでも御幸と同じ高校生だ。
「……、」
そして、数メートル先までぶっ飛ばされた御幸を見た庵は、仰向けのまま首だけを動かし、
『まさか次は自分じゃあ無いだろうな』
とでも言いたそうな目を興戸に向ける。
それに対し興戸は、倒れている庵を見下ろし、涼しく言う。
「規則を守れない軍人には、やはり罰を与えなければなりませんね」
またかい! と叫ぶ庵の顔面に、爪先が確実に食い込む軌道で、脚が振るわれる。
――寸前に、御幸は切り札を切った。
「……と、ところで、梶(かじ)と優衣沙(ゆいさ)はどうした?」
質問に対し、興戸は振りかぶったままピタッ、と一瞬動きを止める。
「梶は自室に戻って睡眠を取り、優衣沙もシャワーを浴びると言って、部屋に戻りました」
言い終わると同時、蹴られなくてすむと思って安心していた庵の顔面に迷わずつま先を食い込ませる。
鈍い打撃音と共に、鉄板剥き出しの床を竹トンボの様に回転しながら滑っていく庵。作業員の何人かが、彼等の痴話喧嘩を面倒臭そうに眺めていた。
その中に審査員が居れば、間違いなく満点を取れたであろうに。何の競技かは知らないが。
そんな庵を眺めながら御幸はフラフラと立ち上がろうと試みる。
すると不意にガコン、とドッグと艦内を繋ぐドアが開き、外見年齢が小学生位の少女が入って来た。
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