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「皆さん、お疲れさまで……ってなんですか!? いったい!?」
その絶叫とも呼べる質問に対し、床にぶっ倒れている庵(いおり)が応じる。
「功実(いさみ)ちゃん、世の中、聞いても良いことと悪いことがあるんだよ……これは聞いちゃあダメな方だよ!」
向こうには、鼻血を垂らしながら起き上がろうとしている隊長。
そして、最早起き上がる力さえ残っていないのか、仰向けで倒れたまま何かを悟ったような顔をしている副隊長。
軽く惨劇レベルのドッグ内に、ちょっと泣きそうになっているのは、オペレーターの山口 功実(やまぐち いさみ)。
少し茶色がかった髪をツインテール状にまとめた、外見は小学生位の可愛らしい少女。
だが、年齢は御幸(みゆき)達と大して変わらない。
そんな功実を見た興戸(こうど)は、
「あなたがここへ来たのなら、それなりの理由があったのでは無いですか?」
「あ、いえ、特に用事があった訳では……暇だったもので」
その答えを聞いた瞬間、……ほぉ、と興戸が黒いオーラを出して功実に近付いて行く。
「ヒッ!」
小さい悲鳴を上げる功実は、興戸を避けるルートを走り、やっと立ち上がった御幸の背後に、サッと隠れる。
それで驚いたのは御幸の方だ。
「は? いや、このパターンは……!」
そこまで叫んだ御幸が、次に何かしらのアクションを取る前に、興戸のハイキックが、再びの顔面にめり込む。
「ブッ、グアッ!! ……ふっ……だが……俺は功実を守っ……!」
そんな事を言いながら、崩れ落ちる御幸。
その刹那、彼は目撃した。
自らの背後に、誰も居ない事に。
そう、御幸が蹴られる前に、既に功実は逃げていたのだ。
膝から床に倒れ込んだ瞬間、御幸は思う。
(……グッジョブ、俺)
心の柱が崩れ落ちる音を聞きながら、御幸の意思は薄れて行く。
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