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どこを見ても水平線しか見えない太平洋の真ん中を、最新鋭戦闘機『wacoal』が疾走する。
その機体に乗っている御幸(みゆき)は、静かな海を防風ガラス越しに見ながらふと思う。
(最近の戦闘機は楽だ)
何故かと言うと、実は今御幸は操縦桿を握っていない。
つまり、オートパイロットに設定して目的地まで全てCPU任せということだ。
御幸的には、自分ではないモノが自分の機体を動かしているのはあまり好かない。
だがそれでも、面倒な作業が省略されるなら構わないと思っている。
ヘルメットに同化しているインカムへ向かい、
「作戦空域に進入した。これより行方不明機の捜索を開始する」
了解、と本部からの返信がくる。
『あれ? 無線封鎖しなくていいのか?』
今度は、横を並走している庵(いおり)からの通信だ。
「今日の仕事はただの捜索だからな、無線封鎖は別に良いだろう」
その言葉を言った途端にワーイワーイというふざけた声が聞こえる。
本気でこの馬鹿を叩き落としてやろうかと考えていると、今度は司令部から、
『追加の司令です、「今回の捜索は友軍との合同で行う」とのことです。詳細情報は友軍に合ってから知らせるようですね』
「友軍? そんな話聞いてないぞ?」
『え~っと、それは私には分かりかねせんが……』
そりゃそうだ、と思っていると、確かにレーダー上に複数の友軍のマーカーが映っている。
しばらくすると、『Walker』型より少し世代遅れの機体が数機、御幸と庵の機体へ接近してきた。
『――こちら第九空挺師団第百三部隊長府川 隆司(ふかわ りゅうじ)認証番号……』
少しいかつい声がヘルメット内に響く、
それに対して御幸は、少し嫌な顔をしつつ、認証番号を打ち込む。
「こちらスカイウォーカー隊隊長、香島 御幸、認証した。今回のミッション、よろしく頼みます」
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