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しばらく周辺海域を捜索していたが、面白いほど何も見つからない。
現在御幸(みゆき)達は一旦捜索を中断し、本部からの指示があるまで、V字編隊で海上をひたすらぐるぐると飛んでいる。
苛々してきた府川(ふかわ)の愚痴が御幸の耳を響かせる。
『全く、なぜ俺がこんなことをこんなガキとしなけりゃなんねぇんだ……別動隊は何してる』
嫌な顔をしていた御幸だが『別動隊』という言葉を聞くと、不思議な顔をする。
「別動隊? なんの話ですか?」
そう質問すると、少し馬鹿にしたような声で府川が、
『今回のミッションは俺達ともう一部隊が捜索している。そんなことも知らないのか』
そんなこと知らされていない、と反論しようとした瞬間、機内のディスプレイ全てに『ROCK』の文字が表示されエマージェンシーコールが響く。
「ッ!? レーザー照準!? まずい、ロックされた!!」
全機回避!! と叫ぶ間もなく、今まで静かだった海面から無数の対空ミサイルが飛び出る。
「海中から!?」
恐らく敵は潜水艦、ならば戦闘機のみのこの部隊では、太刀打ち出来ない。
御幸はそこまで考えると、操縦桿を手前に引き、右足のペダルを蹴る。
すると御幸の機体はその場で縦回転し、機首が海面を向いた、海面に対し、垂直な状態になる。
『wacoal』型最大の特長は、スラスターやブースタの数にある。
その数はそれぞれ数十個あり、これにより空中での静止や高速の旋回速度、全速力でのバック走もできる。
この空中での自由度の高さが『wacoal』たる由縁だ。
まあ、その機動性と引き換えにパイロットは宇宙服の様な服を着なければならないが。
機首を下に向けた御幸の機体は迫りくる無数のミサイルを即座にロックする。
御幸はロックされたことを確認せずにトリガーを引く。
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