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その瞬間『wacoal』の両翼に着いているミサイルポッドから何発ものミサイルが尾を引きながら飛び出る。
このミサイルは攻撃用ではなくフレア弾という擬似熱源弾。
対空ミサイルの大半は、航空機のエンジン部の熱を探知し、それに向かう、熱源探知ミサイル。
つまり、フレア弾は、戦闘機よりも強い熱源を発し、熱源探知ミサイルを逸らすことを目的としたミサイルだ。
御幸(みゆき)の思惑通り、敵のミサイルは、フレア弾を追って逸れて行った。
しかしそれで安心は出来ない。
機首を水平にすると、御幸は即座に本部へ通信を入れる。
「メーデーメーデー、こちらスカイウォーカー隊隊長御幸! 敵の攻撃を受けている! 敵は水中だ! 爆雷を搭載した機体をよこしてくれ!」
するとすぐに返事がきた。
『こちら司令部、了解しました! 準備等で到着予定は十分後になります! それまで耐えてください!』
十分か……。御幸は少しげんなりするが、すぐに気を取り直す。
「今の通信聞いてたか? 十分だ! 十分耐えるんだ!」
すると府川(ふかわ)が、
『そんなこと分かってい――ッ!? なんだあれは!』
御幸は素早く海面を見る。
そこには既に数機の戦闘機らしき航空機が、海中から飛び出していた。
「クッ『F/001-Diver』か、バックを取られた……敵は確実にこっちの息の根を止めたいらしい」
『Diver』型は、潜水母艦と呼ばれる潜水艦と、空母を合わせた様な潜水艦からの出撃を目的とした航空機だ。
普通、航空機は長い滑走路を必要とするが、『Diver』型は潜水艦、つまりは水中からのテイクオフが可能だ。
海水を圧縮し、それを一気に解放することで、海上へ飛び出すことができる。
しかし『Diver』自体の戦闘能力は大したことは無い。
海中からの射出のため、高い機密性と水圧に耐えうる構造を搭載した結果、機動力と装甲の減少が生じることとなった。
しかしそれでも、今の御幸達にとっては紛れも無い脅威なのだ。
「編隊を解いて、各機回避! 可能なら迎撃しろ!」
叫びながら御幸は操縦桿の横についているディスプレイを見る。
そこには、この海域に存在する友軍機と、敵軍機の数が表示されている。
数的には圧倒的に不利、瞬時にそう思ったが、
(数がどうとかじゃなくて、どうやって生きるか考えろ)
ヘルメットのバイザーを下げ、操縦桿を握る手に力を込める。
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