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「行くぞ」
背後には二機の『Diver』、ロックされるのも時間の問題だ。
しかし、御幸(みゆき)は焦らず、両足で足元のペダルを踏み込みながら操縦桿を勢い良く手前に引く。
すると機体がひっくり返り、機体腹部を上に、機首を後ろにしながらバック走を始めた。
ちなみに、コックピットは逆さまの状態である。
ロックした旨を伝える電子音が響く。
躊躇無くトリガーを引き、両翼から二基の短距離ミサイルが飛び出る。
今度は実弾だ。
少し弧をかきながら飛んでいくミサイルは、敵機に直撃し爆風で機体を内側から食い破る。
暴風ガラスには、レーダーディスプレイが表示されており、それによると友軍はかなりの被害を被っているらしい。
(……このままでは)
操縦桿を握る手に嫌な汗が流れる。
「庵(いおり)! お前は府川隊長と残った部隊を連れて空母へ戻れ!!」
その指示を聞いた庵はかなり驚くと。
『待て! お前はどうする気だ!?』
「俺はここに残って足止めをする」
『はぁ? お前一人じゃあ無理……』
「黙れ!! これは命令だ!! さっさと行け!!」
そこからの返答は無かった。
恐らく、他の友軍機との通信を優先したのだろう。
その証拠に、庵の機体に数機の友軍機が接近すると、空母のある方向へ向かう。
しかし、敵もただ見ている訳では無い。
即座に庵達を追撃しようとたかり始める。
それを見た御幸は、焦らずに呟く。
「……操縦モードをセミオートからマニュアルへ移行」
セミオートとは、基本的には搭乗員が機体を操作するが、何十もある推進装置をたった一本の操縦桿で操作することは普通に考えれば不可能なことだ。
故に、セミオートの場合、機体のCPUが次の行動を予測し、パイロットの代わりに推進装置を操作してくれる便利な機能だ。
しかしそれに対し、フルマニュアルは文字通り全てを人の手で行うモードだ。
もちろん、少しでもミスをすれば、機体がバラバラになるか、失速して墜落するのがオチだろう。
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