序章『スカイウォーカー』

4/7
前へ
/236ページ
次へ
海上からの機銃掃射をかい潜り、旋回しつつレーダーを見る。 自機の前方に、報告に無い二つのイレギュラーな反応が見られる。 恐らく、戦闘中の別空域から撤退したか、燃料切れで戻って来たのかもしれない。 もしくは敵艦隊が不祥事――つまり『Walker』の襲撃に驚き、慌てて帰還させたのかも知れない。 とは言え、やることは一つ。 「こちら00(ダブルオー)敵機を二機発見、これより撃破する」 もちろんこんな事を言った所で意味など無い。 無線は通じていないのだから、殆ど独り言に近い。 が、彼としては訓練校ではこうしろと言われたし、どうせ聴かれやしないが、レコーダーに記録はされる。 無駄では無い、とは言い切れ無いが、それでもやらないよかはマシだ。 機首をレーダーに映る敵機の方向へ向け、スロットルを上げる。 直後、莫大な重力が体を押し潰すそうとするが、問題無い。宇宙服の様な特殊なパイロットスーツが体を守ってくれる。 視界の端で爆炎と共に、敵強襲艦が一隻、沈んで行くのが見えた。 スカイウォーカーの内の誰かがやったのだ。それ以外はありえない。 なぜならこの空域に展開している味方部隊は、『スカイウォーカー』しか居ないのだから。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加