MONOTONE

9/12
前へ
/233ページ
次へ
あれから12年経っていた 妹はすっかり大人になっていた 姿の変わらない僕を少し不思議に思っているようだが、気味悪くは思っていないようだ いろいろ話を聞いた この12年にあった事 父と母が他界した事も 僕を探して山で遭難し、妹だけ助かったらしい 「変わらないね」 美咲はそう一言だった 僕のせいで父と母が死んだ事で胸が張り裂けそうだった それから妹と夜遅くまで話し続けた 笑って 「もうこんな時間か」 時計は3時をまわっていた 「ゆっくり寝てね」 そう優しく言ってくれる妹がとても愛おしかった ―必ず守ろう そう思った 「じゃあ、寝るね。お休み」 美咲が立ち上がった刹那 窓ガラスが大きな音をたてて砕けちり、美咲は首から噴水のように血を流して倒れた 「美咲?」 「チカラ…」 身体中に悪寒が走るほど悍ましい声が部屋に響いた 「チカラ…ヲ…ヨコセ」 黒い翼に青い大きな目 鋭い牙には血がついている ―悪魔 頭に浮かんだ 「美咲っ!」 美咲に駆け寄るが、息はない 「ヨコセ…!」 まだ暖かい美咲を抱えたまま僕は動けなかった 食われる ガァン! 「お久しぶりね。俊君」 目を開けると、そこには片手で悪魔を受け止めるリリムがいた 「あ…」 「どうしたの?こんな力も知恵もない悪魔なんて、あなたなら直ぐに存在を抹消できるでしょう?」 リリムが何を言っているのかわからない 「創造しなさい。あなたならできるわ」 …美咲 「うわぁぁぁ!」 僕は無我夢中で悪魔に向かって行った ガッ! 悪魔はその場に倒れ、僕の手には長く鋭い剣があった 「やればできるじゃない。」 剣を捨て、僕は美咲にまた駆け寄る 「美咲っ!美咲っ!」 冷たくなって行く妹に僕は何度も呼びかけていた
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加