黒き翼は白く輝く

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寒気を感じたのは一瞬だけ。 ―コイツからか? わからないが、確かめたくて仕方なかった 僕は足元の紋章に気を配りながらその青い目の近くに寄った ろうそくの火を向ける ―天使…? それは白い翼が片方折れており、古びた布を一枚着た黒髪の天使で、赤い鎖で手足が繋ぎ止められていた。 その天使はゆっくりこちらに顔を向ける ―女の天使だ 「…人間よね?」 掠れた声だ いつから閉じ込められていたのだろうか 「…あんた、誰だ?」 僕は初対面相手に実に失礼だった しかも、相手は天使でも女だぞ 「…人間、これを外して」 ―絶対嫌 僕は黙ってみていた 半裸に近い女を 「聞こえてる?外して」 がちゃがちゃと、鎖を揺らす 「いや、ごめん。主の許可無しではちょっと無理だよ」 僕は困った顔で答えた 「…サタナエルか。あいつ…。ガーラントは死んだみたいだな。」 ―な 完全に疑っていたが、少し聞いてみた 「なんでわかる」 「わかるよ、そりゃあ。天使だもの」 うむ。もっともだ コイツアホっぽさ満開だな 「そうか。じゃあな」 僕は立ち去ろうとした 非情になったものだ リリムの影響だろうか 「なっ!ちょ…!待ってよ!」
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