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あのーっ!誰かいませんかーっ!
中庭で優雅に座る女性にその声が届いた
「あら、珍しいお客様がきたみたいよ。レイア。出てあげて頂戴。」
そのお嬢様姿の女はコーヒーを片手にレイアを見た
「はい。リリム様。」
レイアは一言返事をすると、門へ向かった
「誰かいませんかーっ!」
僕はまた大きな声で叫んだ
するとカチャっと音がして、鉄柵の門が大きな音をたてて開いた
「入って良いって事かな?」
少し中に入ると、さっきの濃い霧が嘘の用に無く、青空が広がっていた
赤と白の花が綺麗に並んで咲いている
「どこなんだよ…ここ」
ふと見ると
庭の綺麗な花畑に緑色の長い髪をツインに結んだ、いかにもなメイド服の女性が立っていた
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
その女性は僕にそう言うと中庭の方へ歩き始めた
「あのっ。ここはどこですか?」
その女性は僕の問い掛けに答えず、歩くこと5分
綺麗な白の円形テーブル
白い椅子
白いパラソル
その椅子に座る
青白く長い髪に赤い瞳、黒いドレスを着た
美しい女性が座っていた
「初めまして。人間のお客様。私はリリム・サタナエル、こちらのメイドはレイア・ガーラント。うちのメイドに粗相は無かったかしら?」
完璧なまでもの笑顔に見とれてしまっていた
「あっ。いえ…大丈夫です」
僕は何故か少し焦っていた
「そう。よかったわ。あなた、お名前は?」
リリムがコーヒーを皿に置く
「えと、琴音 俊です」
僕は軽くお辞儀をした
「よろしくね。俊君」
あっ
余りに中と外の差が違うので、自分の状況を忘れてしまっていた
「あの…」
僕は小声で言った
「なぁに?」
リリムは笑顔で聞く
「ここはどこですか?僕、家族と登山してたら迷ってしまったんです」
化け犬の事は伏せておいた
おかしいと思われたくないからだ
「あなた、下界から来たのでしょう?…そうね、ここは貴方達が言う【魔界】よ」
―…は?魔界?なんだそれ?これ何ゲー?
「魔界って…そんなジョークはいいですよっ。ホントに迷って困ってるんです!」
僕は焦りで腹が立っていた
「無理もないわね。人間なんて何年ぶりかしら。ねぇ、レイア。」
「…300年ぶりぐらいかと」
レイアは目をつむって答えた
「あら。もうそんなに経つのね。早いものだわ」
―なんだ?一体何の話をしてるんだ?
「あのっ!とりあえず、山道に出るにはどちらへ行けばいいですか!?」
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