MONOTONE

3/12
前へ
/233ページ
次へ
あのーっ!誰かいませんかーっ! 中庭で優雅に座る女性にその声が届いた 「あら、珍しいお客様がきたみたいよ。レイア。出てあげて頂戴。」 そのお嬢様姿の女はコーヒーを片手にレイアを見た 「はい。リリム様。」 レイアは一言返事をすると、門へ向かった 「誰かいませんかーっ!」 僕はまた大きな声で叫んだ するとカチャっと音がして、鉄柵の門が大きな音をたてて開いた 「入って良いって事かな?」 少し中に入ると、さっきの濃い霧が嘘の用に無く、青空が広がっていた 赤と白の花が綺麗に並んで咲いている 「どこなんだよ…ここ」 ふと見ると 庭の綺麗な花畑に緑色の長い髪をツインに結んだ、いかにもなメイド服の女性が立っていた 「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」 その女性は僕にそう言うと中庭の方へ歩き始めた 「あのっ。ここはどこですか?」 その女性は僕の問い掛けに答えず、歩くこと5分 綺麗な白の円形テーブル 白い椅子 白いパラソル その椅子に座る 青白く長い髪に赤い瞳、黒いドレスを着た 美しい女性が座っていた 「初めまして。人間のお客様。私はリリム・サタナエル、こちらのメイドはレイア・ガーラント。うちのメイドに粗相は無かったかしら?」 完璧なまでもの笑顔に見とれてしまっていた 「あっ。いえ…大丈夫です」 僕は何故か少し焦っていた 「そう。よかったわ。あなた、お名前は?」 リリムがコーヒーを皿に置く 「えと、琴音 俊です」 僕は軽くお辞儀をした 「よろしくね。俊君」 あっ 余りに中と外の差が違うので、自分の状況を忘れてしまっていた 「あの…」 僕は小声で言った 「なぁに?」 リリムは笑顔で聞く 「ここはどこですか?僕、家族と登山してたら迷ってしまったんです」 化け犬の事は伏せておいた おかしいと思われたくないからだ 「あなた、下界から来たのでしょう?…そうね、ここは貴方達が言う【魔界】よ」 ―…は?魔界?なんだそれ?これ何ゲー? 「魔界って…そんなジョークはいいですよっ。ホントに迷って困ってるんです!」 僕は焦りで腹が立っていた 「無理もないわね。人間なんて何年ぶりかしら。ねぇ、レイア。」 「…300年ぶりぐらいかと」 レイアは目をつむって答えた 「あら。もうそんなに経つのね。早いものだわ」 ―なんだ?一体何の話をしてるんだ? 「あのっ!とりあえず、山道に出るにはどちらへ行けばいいですか!?」
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加