ドッペルゲンガー

【白い部屋】

誰が、何の為にこんな事をしたんだろうか？

オレの家は金持ちではない。

身代金が目的ではないだろう。

……ただのイタズラ？

いや、それもない。

明らかに、手が込み過ぎている。

この壁を見ても、それが分かる。

さっきの部屋もそうだが、この部屋も全てが真っ白なのだ。

四方八方を壁で囲んでしまえば、真っ暗になる。

しかし、天井を見ても、どうやら照明らしき物も見当たらない。

光源が見当たらないということは…。この床や壁が、自ら光を出しているとしか考えられない。

しかし、素材も分からない。

触った感じだと、まるで鉄の様に硬い。

だが、金属程は冷たくない。まるでプラスチックのような、温かくも冷たくもない感じだ。

オレを眠らせて、こんな部屋に閉じ込める。こんな大掛かりな事、誰が何の得があってやるんだ？

オレは、とりあえず落ちている道具に目をやった。

『こんな何も無い部屋で、こんな道具……』

怒りが沸いてきた。

『役に立つかぁっ！！！』

足元にあったゴムボールを、力いっぱい蹴飛ばした。