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しかし、変な所で冷静なのか、靴も靴下も履いていなかったので、つま先ではなく、足の内側でボールを蹴った。
彼の、心の弱い所が見せた行為なのか。
ボールは勢いよく飛んでいったと思いきや、目の前2メートル程の所で跳ね返り、彼の顔面にそのままの勢いでぶつかった。
「バイィーン…
バイィーン…
バィン…
バィン、バィン、バィン………」
ボールは薄いゴム製だった為に、部屋中に響き渡る音を出しながらバウンドして転がっていった。
怒りをボールにぶつけたつもりが、自分にそのまま返って来たのだ。
意志を持たぬ物体からの攻撃は、気が逆立っている時には余計に腹が立つものだ。
『んがああぁーーーっ!!!』
彼は余計に逆上し、そのボールを今度は取り上げ、力いっぱいに壁に向かって投げ飛ばした。
今回は、腰より低い位置に壁に当たる様に投げた。
ボールの反撃を、これ以上くらうわけにはいかなかったのだろう。
また、部屋中に高い音が響き渡る。
そして、彼はとうとう腰を下ろしてしまった。
『…今度は、ドアが無ねぇよ…。こんな道具があっても、何にもならない。』
あぐらをかいた姿勢のまま、両手を体の後ろについて、上を向いていた。
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