13人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと、何か変な気がした。
ドアとボールが当たった壁の距離が、5メートルくらい。
しかし、横幅の壁は、10メートルはあろうかと思う程広かった。
奥行きと、横幅の距離があまりにも違っていた。
普通に考えれば、なんて事はない。
しかし、彼は気になったのか、座りながら、ボーッと奥行きの壁を眺めていた。
すると、急にハッとした。
慌ててロープを取り、おもむろにロープの端を伸ばし、壁に投げた。
「バシッ」という当たったら痛そうな音が響く。
今度は、さっきより高い位置にロープの端を投げ当てた。
そして、次はもっと上の位置に。
すると、ロープは壁にスゥッと吸い込まれていった。
『やっぱりだ!この壁は、行き止まりじゃなかったんだ!』
彼がボーッと壁を眺めていたのは無駄ではなかった。
壁と天井の間に、隙間らしきものがボンヤリ見えたのだ。
『真っ白だから分かりにくかったけど…このヤロウ』
一瞬、顔がゆるみ、口元が少しニヤケていた。
『でも、これじゃあ…』
ロープの端を引っ張ると、さっき投げたロープの端がスルリと壁と天井の間から滑り落ちてきた。
『…無理か』
最初のコメントを投稿しよう!