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しかし、その心配はすぐに解消された。
さっきの憎きゴムボール君である。
あれ程の高い音を部屋中に響かせながらバウンドするのだから、壁の向こう側に投げ、バウンドの音でだいたいの高さを知る事が出来る。
本当なら、壁の上まで登ってから落としたいのだが、この大きさのボールは邪魔になってしまう。
まずは、鉤爪のロープを壁に投げる。
上手くロープの端が壁の向こう側に吸い込まれていった。
ここでもし、作った鉤爪がロープから外れ、向こう側に落ちてしまうなんて事になれば、もう一生、ここで暮らさなきゃならない。
その前に、餓死が先なのだろうが…。
ゆっくり、慎重にロープをたぐり寄せ、ガッという音と共に、ロープはピンと張られた。
『よし!上手く一度でいけた!』
次に、このボール君がオレの運命を握っている…。
パッとボールを投げ、見えるはずもない壁の向こう側を睨み付けた。
ボールが壁を越えて、あの高い音が向こう側で響くのを期待した。
………………。
しかし、音は響かなかった…。
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