【もう1人のオレ】

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『いくら考えても無駄だ。お前に分かる訳はない』 光一は、うつむいていた顔をサッと上げ、男に言った。 『オレが考えても無駄だって思うなら、さっさと教えろよ!』 男は、また凍るような眼差しを尖らせ、光一を一言で貫いてしまった。 『お前を殺しに来るのは…お前だ』 光一は、理解出来る筈もないその言葉を、必死に理解しようとした。 『正確に言えば、もう1人のお前だ』 この言葉を聞いた時、光一は考えるのを止めた。 もはや、自分で考えて見つけ出せる答えではない事の方を理解したからだ。 『もう1人のオレって、誰?どういう意味だ?オレはオレだ。オレは、この世に1人しか居ないんだぞ!』 光一は、今や遅しと返答を待った。 出来る事なら、自分が喋ると同時に返答が欲しい位だった。 『まぁ落ち着け。確かに、お前の言う通りだ。もし、世界が1つだけならな…』 光一は男の言葉を聞いて、男の言っている内容を頭に詰め込むが、話が同時の速さで広がっていくので、いつまで経っても話を理解する事が出来なかった。
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