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『法子…お前、どうしてこんな所に…』
いつから立っていたのだろうか。
法子は、申し訳なさそうな面持ちで俯(うつむ)いていた。
『ごめん、光一…』
光一は焦った様子で、一度男の方を振り返り、また法子の方を見直した。
『…法子、今の聞いたか?』
『………』
『どうなんだ?』
『………うん』
法子は、光一に遠慮した様子で答えた。
『そうか…』
もはや、隠しようもない。
『…だって!今日の光一、何か様子が変だったから!具合悪いって早退して…だから、私も心配で…』
『心配かけて悪かった。本当は、具合なんか悪くないんだ。』
光一は、自分を心配して一緒に早退して追い掛けてきてくれた法子を、優しく抱き締めた。
『法子…。おれは今日、どうしてもコイツと話をしなくちゃいけないんだ』
光一の鋭い目は、再び男に向けられていた。
『オレに用があったのか。何の話をしたいんだ?』
男は、明らかなとぼけ顔をしてみせた。
『とぼけやがって…。今日こそ、昨日の話を最後までしてもらうぞ』
法子は少し怯えた様子で、抱かれた光一の腕の中から、じっと男を見つめていた。
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