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悠哉
「えっと…この子は…?」
秋穂
「あー、この子は真冬。
一番下の子で、一番生意気な子」
真冬
「………」
秋穂
「おほぉっ、冗談だよ冗談」
悠哉
「真冬…ちゃん」
秋穂
「ほら真冬。挨拶して」
真冬
「………」
堂々としたシカト。
悠哉
「真冬ちゃん。
俺、悠哉っていうんだ。今日からよろしくね?」
真冬
「………」
悠哉
「……まじかぁ…」
うなずくことも、目を合わせることさえもしてくれない。
あれ、俺、嫌われてる…?
春菜
「た、大変だよー!!」
慶治さんを呼びに行ったはずの春菜さんが、息を切らして帰ってくる。
秋穂
「どうしたの?」
春菜
「あ、あのあのあのっあのね!」
秋穂
「落ち着いてよ」
いや、むしろ春菜さんの様子を見てなんの変化も見せない秋穂ちゃんは落ち着きすぎだと思うけど。
春菜
「こ、これっ!」
秋穂
「お?」
真冬
「……はぁ」
春菜さんの手には、1枚の封筒。
真冬
「貸して」
春菜
「あうっ」
返事を待たずにその手から紙を奪い取る。
真冬
「………」
秋穂
「ほい」
一通り目を通し終わったのか、無言で秋穂ちゃんの手に返す。
表情は変わっていないが、なんだか…怒ってる…?
真冬
「………」
ついに、俺と一言も会話しないまま、真冬ちゃんはどこかに行ってしまいました。
秋穂
「んー…またか」
悠哉
「また?」
秋穂
「読めばわかるよ」
悠哉
「あ…」
はい、とその手紙を俺の手に渡してくれるのだが…読んでいいものなのか、これ。
だめって言われてないから、読んでも大丈夫なんだろうけど、春菜さんの様子からして、きっと大変なことが書かれているに違いない。
焦っているのは、春菜さんだけなんだけどね。
悠哉
「ご、ごくっ」
息を飲んで、勢いよく紙を開く。
悠哉
「おお…?」
紙の中にはごつい字が並べられている…。
――やあ春菜。
春菜がこの手紙を見つけた時、父さんはもうここにはいないだろう。
うん、そうなんだ。またなんだ。
と、いうわけでまたしばらく家を留守にする。長女である以上、しっかりと家を守るんだぞ。
父より。
悠哉
「な、なんだこれは」
続けて下に行くと、こんどは見なれたきれいな字。
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