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秋穂
「終わった?」
悠哉
「あ…ごめんね急に」
春菜
「ううん。なんか賑やかな友達だったね」
き、聞こえてたー。
なんだか急に恥ずかしくなってきたぞ。
あんな奴が友達だなんて思われたら、引かれる!
悠哉
「あ、あの違うんです。
あいつは友達なんだけど、そうじゃないんです」
秋穂
「え?」
悠哉
「た、ただ単に一緒にいるだけっていうか、その、俺にはあいつが何言ってんのかわかりません。だから違うんです」
秋穂
「あははっ、無理しなくていいよ。
誰しも一度は通る道だと思うよ。
そういうゲームって。それに友達は大切にしないと」
悠哉
「ぐ…う…その通りです」
あんな奴でも、俺の友達なんです。
春菜
「そ、それどころじゃないよ!」
秋穂
「春ねぇは騒ぎすぎなんだよー。
べつに初めてのことじゃないでしょ」
春菜
「そ、そうだけど…」
悠哉
「……えっと…これって冗談…」
秋穂
「なんかじゃないよ」
春菜
「う、うん…」
悠哉
「まじかぁ…」
母さん、本当に何も言わずに旅立ってしまったのか…。
一言くらい言ってくれたっていいのに。
俺が反対するとでも思ったのかねぇ…。
悠哉
「こういうのってよくあることなの?」
秋穂
「うん。あの人が家にいること自体珍しいよ」
悠哉
「まじかぁ…」
だからみんなしっかりしてるのかな。
春菜
「で、でもでもでも!
今回はお父さんだけじゃ…」
悠哉
「ん…?」
ちらちらと俺を横目に見てくる。
俺のこと、気にかけてくれているんだろうか。
悠哉
「気にしなくていいよ。
母さんだってもう子供じゃないんだし」
春菜
「ぅぅ…」
悠哉
「それに、今まで好きなこととかやらせてあげられなかったから、むしろいい機会だと思うんだ」
『俺』という存在が重しになっていたのは、事実だ。
母さんは今、羽を伸ばせるチャンスを掴んだんだ。
そのチャンスをしっかり楽しまないと。
春菜
「………」
秋穂
「………」
悠哉
「だから気にしなくていいよ。
それに、みんながいるから大丈夫」
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