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広いし、キレイだし、豪華だし。
俺とは住む世界が違うよ、この人…。
慶治
「さて…ここだよ」
そう言ってひとつの扉の前でとまる。
玄関から進んで一番奥にある扉。
このなかで、新しく家族になる人が待っている。
そう思うと、緊張なのか、それとも期待感なのかよくわからないものがこみあげてくる。
でも…
智美
「………」
母さんは、きっと俺以上に緊張しているはすだ。
それに引き換え…楽しそうだよな、このおっさん。
慶治
「おーい帰ったぞー」
「あ、おかえりなさい」
悠哉
「は?」
若い。しかも女の子の声が聞こえる。
「遅いよもう!」
さらにもう1回。
「会わせたい人って誰なの?」
もう…1回……。
慶治
「いやあ、すまんすまん。
ん? 真冬はどうした」
「あ、あの…その…興味がないって…自分の部屋にいる」
慶治
「まったく…しょうがないなあいつは…」
「ぼくだって本当は部活やりたかったのに、早く帰って来たんだからね」
「あたしもあたしも!
まあ、こっちのほうが面白そうだから全然いいんだけどねっ」
慶治
「ははは。そう口をとがらせるな。
いい知らせだぞ? きっと大喜びだ」
まるで親子みたいな会話だな…。
なんだなんだなんだ。
今、この部屋の中には誰がいるんだ。
悠哉
「落ち着け。俺」
1個ずつ考えていくんだ。
まず、この部屋の中には慶治さんと、そしてたぶん3人の女の子がいる。
この女の子たち、きっと慶治さんの娘に違いない。
えっと、えっと…つまりだな。
慶治さんは俺の父さんになるわけで…だから、その、つまりだな…
い、いかん。
願望と現実が俺の中で暴れている。
慶治
「入ってきてくれー」
智美
「は、はい」
悠哉
「ちょ、母さん俺まだ推理とちゅ…」
心の準備だってまだできていない。
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