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慶治
「今日から、この人がお前たちの母さんになる」
ついに、ついに慶治さんが、俺の一番望んでいたことを口にする。
悠哉
「きゃっほーう!!!」
その言葉を聞いた俺は、真っ先に、裸足のまま外へ飛び出し、そして携帯電話の着信履歴の一番上の人物に電話をかける。
プルルルルル
プルルルルル
『おう』
わずか2コールでの短い返事。
悠哉
「た、大変なんだ聞いてくれ翔(しょう)!」
翔
『なんだどうした』
この電話の向こう側の聞きなれた声の持ち主は俺の悪友の相葉翔。
学校でも外でもよくつるむこいつは、もう腐れ縁といってもいいかもしれない。
俺は、今あった出来事を全て、こいつに話さなきゃいけないと思った。
悠哉
「お、俺に、ぎ…義理の、お、お姉ちゃんか妹かはまだわからないけど、で…できた……かもしれない」
翔
『おお! お前もか!
俺も今できたところだ!!』
悠哉
「え!? 嘘!?」
たしか、こいつの家って両親だった気がするけど…?
こんな偶然があるものなのか。
本当にこいつとは、なにかしら特別な縁があるのかもしれないな。
翔
『あほう。こんな嘘ついてどうする』
悠哉
「ま…まあそうだけど…」
翔
『まあ妹ていうか、妹みたいな存在なんだけどな。実の兄より俺に懐いてて、めちゃくちゃ甘えてくるんだ』
悠哉
「へぇ…いいな、それ」
翔のやついつの間にそんな羨ましいポジションにいたんだ…。
翔
『だがこいつはまだだ。
俺はまず、この元気のいい双子の姉の方を攻略しなきゃいかん』
悠哉
「は?」
なにこいつ。
翔
『なぜって? それは一目惚れだからさ』
悠哉
「いや聞いてないよそんなこと。
てか、なんの話してんの?」
翔
『ゲームだが…違うのか?』
悠哉
「あ、うん、そう…だね」
そうだった。
こういうやつだったっけこいつ。
真面目に話をしていた自分が恥ずかしすぎる。
悠哉
「ごめん。切るね…」
翔
『おう! あとでそっちのゲームの話聞かせろよな』
悠哉
「うん…。じゃあね」
はあ…ゲームの話なんかじゃないんだけどなぁ…。
今後なにかあったとき、こいつに相談することは間違っているというのが学べたし、まあいいか。
きっとあいつ、俺に義理の妹ができたなんて言ったら、発狂するんだろうな。
悠哉
「くわばらくわばら…」
さて…中に戻らなくちゃなぁ。
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